生まれ持った特性を努力で変えることは難しいため、自分が苦手なことを認識したうえで、どうカバーしていくかを考えるのが得策です。例えば、自分では気をつけているつもりでも不注意で忘れてしまうことが多いなら、「忘れないように頑張る」よりも、忘れる前提でメモやTODOリストを残す、約束の時間に遅れてしまうならスマートフォンのアラーム機能を使うなど、工夫できることを探してみましょう。また、コミュニケーションが苦手という特性から、人に頼る・相談するという発想をなかなか持てず、困っても一人で解決しようと抱えこんでしまう人が多いようです。誰かに聞く、相談する、助けを求めるという発想を持てると、より生活しやすくなります。

また、大人になって発達障害と診断される人は、自己評価が低い人も多いため、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。大きな目標を掲げても失敗につながりやすいため、目標に至るまでのプロセスを細分化し、小さな達成感を得るたびにご褒美などで成功を確認するという体験を繰り返すことで自尊心を高めていきましょう。職場の上司など周囲の人もできるだけサポートすることが大切です。

発達障害の特性は、周囲から本人の努力不足やわがままという性格的な要因と捉えられやすい面があります。努力できる部分と特性の部分を見極めて対処するためにも、周囲の人にも発達障害の特性を正しく理解してもらうことが重要です。例えば、高いコミュニケーション能力や柔軟性が求められる仕事は苦手でも、一人でコツコツと取り組むような仕事は得意など、特性に合わせて業務や環境を調整することでうまくいくこともたくさんあります。

本人の工夫

  • 得意なことを生かせる環境を選ぶ
  • 苦手なことをカバーする工夫を考える
  • 困ったら誰かに相談する
  • プロセスを細分化して小さな成功体験を積み重ねる

周囲の対応

  • 発達障害の特性を正しく理解する
  • 得意なことを生かし、苦手をカバーできるよう、環境を調整する

発達障害と診断されたからといって、その人の人間的な価値が低くなるわけではありません。あくまでも困りごとを解決し、少しでも生きやすくするための手段として、診断が役に立つということです。また、発達障害を疑っていても、うつや不安障害など発達障害以外の要因で困りごとが発生しているケースもありますので、心配なときは受診を考えてみてはいかがでしょうか。

発達障害とは、実はとても身近なものです。
暖かく皆で支援し合いながら暮らして行きましょう。